野球に多い怪我と怪我をしない体作り 野球のケガ予防・練習メニュー

野球で多い怪我
  1. 野球に多い怪我はどんな怪我【ケガの種類】
  2. 野球のケガ 治し方
  3. 野球は怪我しない体づくりも大切

野球は怪我の多いスポーツです。

ボールを投げたり走ったり、バットを振ったりはもちろん、ベーズ間の全力疾走、スライディングなど全身を使っておこなうスポーツです。そのため身体のあらゆる場所にケガのリスクがあるのです。

それでは野球では、どのような怪我をする可能性があるのでしょうか。

今回の記事では、身体の場所ごとに起こりやすいケガの種類や原因、治療法などについてご紹介します。楽しく野球を続けるためにも、怪我の可能性について知り、予防につなげてくださいね。

目次

なぜ野球選手には怪我が多いのか?

野球には怪我が付き物とされています。プロ野球選手や実業団の選手、高校野球の選手など、怪我とうまく付き合いながらプレイを続けている方も珍しくありません。

野球選手にケガが多い理由

1. 同じ動作を繰り返すため特定の場所に負荷がかかる
2. 瞬発的な動作で筋肉や腱、靱帯を痛めやすい

野球選手には怪我がい多い、理由の1つとして、左右いずれかの利き腕で同じ動作を反復することが挙げられます。バットを振ったりボールを投げたりする動作を片方の腕側で繰り返すことで、特定の場所に負担がかかり筋肉や間接などのケガが多くなるのです。

また、野球のプレイ中には瞬発的な動作を求められることが多く、筋肉や腱、靱帯といった軟部組織の損傷や、スライディングでの接触やデッドボールでの骨折などをしやすいことも、野球選手に怪我が多い理由として挙げられます。

野球選手に多い怪我「肩の怪我」

それでは次に、身体の場所ごとに起こりやすい野球選手の怪我の種類についてご紹介します。まずは野球選手にもっとも起こりやすい怪我の1つである肩の怪我について、その種類や特徴を見ていきましょう。

・インピンジメント症候群

野球選手の肩の怪我として、まず挙げられるのが野球肩ですが、その大半を占めるのがインピンジメント症候群です。利き腕で同じ投球動作を繰り返す投手に多く見られる怪我ですが、野手であっても発症する可能性はあります。

投球動作にともなって肩の骨と骨、または筋肉と靭帯がぶつかることで、腕を上げた時に痛みや違和感を生じます。腕を上げる途中で症状が出るのですが、腕を上げきってしまうと症状がなくなるという特徴もあります。

軽症であれば様子を見ながら野球を続けることも可能ですが、進行すると腱板断裂につながることもあるため、まずは専門医の診断を受けることが重要です。

基本的に温熱療法やステロイド注射といった保存療法が採られますが、難治例では内視鏡を用いた手術がおこなわれることもあります。

・腱板損傷

腱板損傷は投球動作を繰り返すことで、腱板(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋の腱の束)が上腕骨頭から剥がれたり、破れたりすることで起こります。そのため、投手に多く見られる傾向があります。

症状としては、肩の痛みで腕を上げにくくなることや、寝ているときに肩の痛みで目が覚めることなどが挙げられます。ひどくなると肩関節が拘縮し、腕を上げられなくなります。

腱板損傷を発症した場合、自然治癒はほとんど期待できません。薬物療法で痛みを抑えることは可能ですが、野球を続けるのであれば手術が必要となることもあります。

とにかく腱板断裂は非常に扱いの難しい怪我であるため、まずは専門医に相談して、治療の方向性を決めていくことが求められます。

・肩関節唇損傷

肩関節が上下、前後へとブレないように支えている関節唇が、投球動作やスライディング動作、ダイビングキャッチなどによって剥がれることで肩関節唇損傷が起こります。

発症すると投球動作の際に肩の痛みを生じるほか、肩関節が抜けるような感じを覚えたり、引っ掛かりを感じたりすることもあります。

肩関節唇損傷も残念ながら自然治癒することがありません。プロ野球選手の中にも、肩関節唇損傷のために引退を余儀なくされた方も少なくありません。

軽症例であれば数週間のノースローで改善することもあるため、なるべく早めに専門家に相談することがおすすめです。

野球選手に多い怪我「肘の怪我」

肩と並んで野球選手に多く見られる怪我が肘の怪我です。肘の怪我は症状が出る場所によっていくつかの種類に分けられるため、それぞれについて詳しくみていきましょう。

・離断性軟骨炎

離断性軟骨炎は成長期の小中学生に多く見られる肘の怪我で、投球動作などが原因で、肘の骨から剥がれた軟骨が遊離し(遊離軟骨)、関節に挟まることで痛みや引っ掛かりを生じます。

初期段階では肘の外側に運動時の違和感や運動後の鈍痛が出る程度ですが、進行すると投球動作時に著明な痛みを訴えるようになります。

離断性軟骨炎は発症に気づくのが遅れると、手術が必要になるケースもあります。そのため、肘の違和感を覚えたら、早めに指導者や専門医に相談することが重要です。

幸い、離断性軟骨炎に関しては、剥がれた骨をくっつける治療をおこなうことによって、ほぼ全例でスポーツに復帰することが可能となっています。

・上腕骨内側上顆炎

肘の怪我の中でもっとも起こりやすいのが上腕骨内側上顆炎で、10人中1人から3人に発症を認めるとされます。投球動作にともなって肘の内側の靭帯が引っ張られ、骨や軟骨を損傷することが特徴です。

安静時にはほとんど痛みを感じることがありませんが、投球動作の際に、肘の内側に著明な痛みを訴えます。また、肘の内側に圧痛(押すと痛いこと)を認めることも特徴の1つです。

軽症例では運動を休んだり、ストレッチをしたりすることで改善が期待できます。痛みが強い場合は局所麻酔やステロイド注射といった治療をおこないますが、通常は手術をするようなことはありません。

・尺骨神経障害

長年にわたって野球をしていると、肘の骨の変形や硬くなった筋肉によって尺骨神経(小指側の神経)が圧迫され、小指や薬指にしびれが出るようになります。

筋肉が硬くなっている場合は、ストレッチをおこなったり、投球動作を控えたり、フォームを見直したりすることで改善を図ります。

肘の骨の変形で症状が出ている場合、保存療法で改善が見込めないようであれば、手術療法が検討されることもあります。

野球選手に多い怪我「手首・指の怪我」

野球をしていると、バットをスイングするときや、ボールを捕球するときに、手首や指に怪我を負うこともあります。そこで、野球選手に起こりやすい手首や指の怪我についてご紹介します。

・有鉤骨鉤突起骨折

手首には手根骨と呼ばれる8つの骨がありますが、その中の1つである「有鉤骨(ゆうこうこつ)」の突起が折れると、有鉤骨鉤突起骨折を発症します。

高いレベルで野球をプレイする方に多く見られる怪我で、特に、スラッガータイプの打者に発症しやすい特徴があります。通常はグリップエンド側(下側)の手に骨折を生じます。

発症すると手のひらの小指側に痛みを生じます。また、痛みのために手首を反らしたり、手を握ったりすることができなくなるほか、手のしびれを生じることもあります。

通常は保存療法で骨癒合を待ちますが、スポーツに早く復帰したい場合は、折れた骨を外科的手術によって摘出することもあります。

・マレットフィンガー

マレットフィンガーは突き指の代表例で、イレギュラーしたボールが指にあたったり、ボールを取り損ねたりしたときに、指にボールがぶつかるなどして発症します。

衝撃によって指の第一関節にある腱が切れたり(腱性マレット)、腱の牽引力によって骨が剥がれたり(骨性マレット)します。腱が切れた場合は特に痛みを生じませんが、骨が剥がれると指の痛みを生じます

腱性マレットの場合は安静にすることで腱の回復を待つことが一般的です。骨性マレットも基本的には保存療法で経過を見守りますが、場合によっては手術が必要となるケースもあります。

野球選手に多い怪我「腰の怪我」

野球をしていると、投球や送球、バットのスイング、守備の姿勢などによって腰にも負担がかかります。では、野球選手に多い腰の怪我にはどのようなものがあるのでしょうか。

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・急性腰痛症

急性腰痛症はいわゆるぎっくり腰のことを意味します。バットをスイングするときだけでなく、ボール拾いをしているときに起こることもあり、どのポジションでも起こりうる怖い怪我です。

ぎっくり腰の主な原因は、腰部や臀部の筋緊張にあります。硬くなった筋肉が何らかの動作で急に引っ張られ、断裂することで、激しい痛みや可動痛を生じることが特徴です。

ぎっくり腰を起こした場合、まずは安静にしてRICE処置をおこなうようにしましょう。また、なるべく早めに整形外科や整骨院などでみてもらうことも重要です。

急性症状は2日~3日もすれば収まってきますが、焦ってスポーツに復帰すると、ぎっくり腰を再発する可能性があります。そのため、医師や指導者の指示に従うようにしましょう。

・腰椎分離症

腰椎分離症は中学生くらいの野球選手に多く見られる怪我で、腰椎(腰の骨のこと)の一部に骨折を生じることが特徴です。原因としては同じ動作の繰り返しや、オーバーユースなどが挙げられています。

症状の特徴は、上半身を後ろに反らした際に腰痛が生じることです。また、お尻や太ももの外側に痛みを生じるケースもあります。

治療法は保存療法で経過を見守ることが一般的です。痛みを軽減する目的の場合、1ヶ月から3ケ月程度の安静が必要とされます。骨癒合を待つ場合は半年から1年を要します。

・椎間関節性腰痛

椎間関節性腰痛は、腰の骨(腰椎)と骨で構成される関節に見られる腰痛です。投球動作やバットのスイングなど、腰の回転を繰り返すことで、椎間関節にストレスがかかると発症リスクを増します。

症状の特徴は、腰を回転させたときや、上半身を後ろに反らしたときに痛みが増強するという点です。また、腰の右側か左側、どちらか片方に痛みが出ることも特徴として挙げられています。

椎間関節性腰痛は慢性腰痛の一種でもあり、初期段階で安静を心がければ、まもなく症状は快方に向かいます。そのタイミングでストレッチや筋トレをおこなうことで、再発リスクを下げることが期待できます。

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野球選手に多い怪我「膝・足首の怪我」

野球にともなう動作は、膝関節や足関節(足首)にも大きな負担をかけます。では、野球選手に見られる膝や足首の怪我としては、どのようなものが挙げられるのでしょうか。

・膝蓋腱炎

膝蓋腱炎(しつがいけんえん)は、太ももの前側にある大腿四頭筋腱によって、膝蓋骨が引っ張られることで起こります。膝を曲げた姿勢でいることが多いキャッチャーに多く見られがちです。

膝蓋腱炎の主な原因としては、筋肉の使い過ぎや疲労による筋緊張、柔軟性の低下、急激な膝への負荷などが挙げられます。特徴的な症状は、膝を曲げ伸ばしする際に痛みが出るということです。

基本的には太もも前面の筋緊張を緩和したり、適切な休養を取ったりすることで改善が見られます。また、痛みがなくなった段階でストレッチを心がけることで、症状の再発を予防することが期待できます。

・半月板損傷

膝関節のクッションとしての働きをもつ半月板ですが、キャッチャーの場合、本塁でのクロスプレーなどの衝撃によって、半月板損傷を負うことがあります。

半月板損傷を発症すると、膝の曲げ伸ばしにともなって痛みが生じるほか、ロッキングといって、膝関節を曲げ伸ばししにくくなる特徴があります。場合によっては出血や水腫を認めることもあります。

痛みに加えてロッキングもある場合、手術療法が検討されることとなりますが、半月板の血行が良い部分を損傷した場合、保存療法によって自然治癒が期待できるケースもあります。

・足関節捻挫

無理な態勢で捕球したり、ベースを踏み損ねたりすると、足関節を捻挫することがあります。足関節捻挫は1度から3度に分類されており、ひどくなると松葉杖を使わないと歩行も困難となります。

主な症状は足関節の痛みや腫れ、内出血、圧痛、歩行障害などです。軽症であれば2、3日でスポーツに復帰できますが、重度になると2、3ヶ月の治療を要することもあります。

足関節捻挫が疑われる場合は、応急処置としてRICE処置を施します。その後、整形外科や整骨院で詳しくみてもらう流れとなります。

その他の怪我

上記の怪我以外にも、野球のプレイ中に以下のような怪我を負う可能性があります。

・打撲

打球やノックのボールを取り損ねた時や、相手選手と接触するなどした時に、身体の各部に打撲を負うことがあります。打撲部位に熱感やあざがみられる場合、内出血を起こしている可能性があります。

症状は打撲をした直後よりも、しばらく時間が経ってからあられることも多く、関節付近に打撲を負った場合、関節を動かしづらくなることもあります。

打撲を負った場合も、一般的にはRICE処置をおこなうこととなります。また、たかが打撲と放置せず、専門医に見てもらい、後遺症を残さないようにすることも大事です。

・背中の挫傷

無理な態勢で飛球を捕ろうとした時などに、背中の筋肉に挫傷(肉ばなれ)を起こすことがあります。背走して打球を追う野手に比較的多く見られる傾向があります。

不自然な態勢を取ることで背中の筋肉に急激な負荷がかかり、筋肉の繊維を損傷することで発症します。発症するとズキズキとした痛みや可動制限が見られます。

怪我の初期にはRICE処置などをおこない、炎症の拡大を抑制します。2、3日が経過したら、電気治療やマッサージ等をおこない、損傷部位の回復を促します。

・腸脛靭帯炎

冬場に長距離走などをおこなうと、股関節から膝まで伸びている腸脛靭帯が太ももの骨と擦れあい、腸脛靭帯炎を起こすことがあります。走り込みの多い投手に見られがちなスポーツ障害の一種です。

腸脛靭帯炎の原因は主にオーバーユースですが、走る時の姿勢やランニングフォームが悪いと、腸脛靭帯炎の発症リスクを増すことにつながります。

軽度の腸脛靭帯炎であれば、ランニングを控えることで改善が期待できます。症状が強いときには痛み止めなどを利用し、一時的に運動を中止します。

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野球でケガをしない体つくり予防に重要なこと

ポイントをまとめて下さい

冒頭でもご説明したように、野球選手に怪我が多い理由として、

1.同じ動作を繰りかえすため特定の場所に負荷がかかる
2.瞬発的な動作で筋肉や腱、靱帯を痛めやすい

ことが挙げられます。野球選手に見られる怪我の多くは偶発的に起こりますが、上記2点を踏まえたうえで、普段から意識して身体づくりをおこなうことで、怪我のリスクを下げることが期待できます。

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①同じ動作を繰り返すことによる怪我の予防方法

・運動前のウォーミングアップ

身体が十分に温まっていない状態で同じ動作を繰り返すと、特定の場所にばかり負荷がかかり、怪我のリスクが高まります。

運動前にはランニングやダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)をおこない、身体を温めておくことで、筋肉の柔軟性を高め、怪我のリスクを減らすことが期待できます。

・運動後のストレッチ

運動後にストレッチをおこない、筋肉を柔軟に保っておくことで、身体の回復力を高めることが期待できます。また、筋肉が柔軟だと関節にかかる負荷が減少するため、繰り返しの動作による怪我の予防につながります。

②瞬発的な動作によるケガを予防する方法

・筋力トレーニング

関節まわりの筋力が弱いと、急激な負荷がかかった時に関節を痛めやすくなります。筋力トレーニングによって関節まわりの筋力をアップさせることで、関節の保護機能が強化され、怪我のリスク減につながります。

・適度な休息

身体が疲れた状態で野球を続けると、瞬発的な動作によって怪我をするリスクが高くなります。「練習するときはしっかり練習する」「休むときはしっかり休む」という切り替えが大事です。

ケガをした場合の練習メニューは

ポイントをまとめて下さい

怪我をした場合であっても、完全に練習を休むことは選手にとって不安なものです。では、怪我をした場合、どのような練習メニューをこなすと良いのでしょうか。

怪我に影響しない練習をする

怪我をした場合、怪我した場所に影響しない練習メニューを考えるとよいでしょう。例えば、足関節を捻挫したとしても、上半身の筋力トレーニングは可能です。

また、野球肘を発症していたとしても、ランニングならできるはずです。投げ込みができない間に下半身を強化することで、怪我が治った時に、球速を増す結果につなげることも期待できます。

プールで練習する

水には浮力があるため、プールで練習をおこなえば、関節にかかる負担を減らすことが可能です。また、水の抵抗があるので、効率よく筋力アップに取り組むこともできます。

他の選手のプレイを見る

野球に限らずすべての運動は模倣から始まります。怪我をして身体を動かせないときは、上手な選手のプレイを見ることも練習になります。

まとめ

野球をしていると怪我をすることは珍しくありませんが、無理をして練習を続けると、症状が悪化したり、最悪の場合は手術が必要になったりすることもあります。

そのため、野球中に怪我をしたら、まずは応急処置を施し、整形外科や整骨院などで専門家にみてもらうことが重要です。また、普段からストレッチや筋トレに取り組み、怪我のリスクを下げるよう心がけましょう。

 

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