坐骨神経痛と間違える病気!椎間板ヘルニアなどとの違いは?

坐骨神経痛と間違える病気とは

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みなさんは、「坐骨神経痛」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
テレビ等で耳にして、自分の症状はまさにこれだ!と思われた方もいらっしゃるでしょう。
しかし、実際に病院を受診すると、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの診断がつき、「自分の症状は、坐骨神経痛じゃなかったのか・・・?」と、不思議に感じたことはありませんか?

この記事では、坐骨神経痛について、
• どんな症状が出るのか?
• 椎間板ヘルニアの違いとは?
• 坐骨神経痛と間違いやすい他の病気は?
などをご紹介します。

この記事を書いた人

名前 TOMOKO
医者兼ライター
職業・資格 麻酔・ペインクリニックを専門とする医師
プロフィール 手術麻酔や術後管理に従事するかたわら、肩こりや腰痛に代表される
慢性痛の診療にも尽力しています。
ライターとして 「tomoko」のニックネームで医療系記事を中心に
執筆活動も実施。趣味はヨガ、登山、DIYなど。
目次

坐骨神経痛とは

坐骨神経痛は、臀部や大腿後面、ふくらはぎといった坐骨神経の支配領域に出る痛みや痺れの症状のことを指します。
あくまで症状の名前であり、「坐骨神経痛」という病気があるわけではありません。
すなわち、坐骨神経痛をきたす何らかの疾患が、背景にあることになります。

坐骨神経痛の症状

坐骨神経痛では、臀部から下肢にかけて広い範囲で痛みや痺れが生じます。
坐骨神経は、腰から始まり足先まで伸びている、人体で最も長い神経です。
脊髄から分岐した神経根は骨盤内で集まり坐骨神経となり、骨盤から出ると大腿後面を走行します。膝のやや上で総腓骨神経と脛骨神経に分岐し、それぞれ足先まで伸びています。
坐骨神経が支配する皮膚感覚や筋は脚全体に及ぶため、症状が出る場所は腰から臀部、大腿後面、ふくらはぎなど、広範囲に及びます。

坐骨神経痛の走行図 (図:坐骨神経の走行)
参照)日本ペインクリニック学会 ペインクリニック治療指針改定第6版
https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/kaiin_sisin06.html

坐骨神経痛の原因

坐骨神経痛の原因は多岐に渡ります。
最も頻度が高いのは腰椎疾患で、坐骨神経痛の8〜9割を占めます。
坐骨神経は、脊髄から分岐した神経根が集まって形成されており、腰椎疾患ではこの神経根が障害されることで、坐骨神経痛を生じます。
また、坐骨神経が足先まで走行する過程で絞扼されることによって坐骨神経痛が生じる場合があります。
代表的なものに梨状筋症候群があり、坐骨神経が骨盤外へ出る際に梨状筋によって絞扼され、臀部痛・下肢痛が生じます。
その他の原因として、糖尿病などで末梢神経が障害され、坐骨神経痛をきたすことがあります。

分類

疾患の例

根性坐骨神経痛 腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、変形性腰椎症、腰椎すべり症
絞扼性坐骨神経痛 梨状筋症候群、総腓骨神経絞扼障害
神経障害性坐骨神経痛 糖尿病、帯状疱疹後神経痛、外傷後神経障害

坐骨神経痛の治療方法

坐骨神経痛の治療は、背景にある原疾患の治療となります。
腰椎疾患の場合は、運動療法や手術を行います。
梨状筋症候群では、梨状筋のストレッチが有効な場合があります。
痛みや痺れに対する対症療法として、内服治療や神経ブロックがあります。

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛

坐骨神経痛と間違える病気に椎間板ヘルニアがあります。

腰椎椎間板ヘルニアは坐骨神経痛をきたす疾患の一つであり、臀部から下肢にかけての痛みや痺れを生じます。
坐骨神経痛の原因として腰椎疾患が多くを占めますが、特に若い方の坐骨神経痛では腰椎ヘルニアが背景にある頻度が高いです。
坐骨神経痛に伴って、腰に強い痛みがある場合は、腰椎椎間板ヘルニアの可能性が高くなります。また、間欠跛行(長時間の歩行で症状が増悪すること)も腰椎椎間板ヘルニアに特徴的です
椎間板ヘルニアとは
腰椎椎間板ヘルニアは、腰痛や足の痺れの原因としてメジャーな疾患です。
20〜40代の若い世代で好発し、どちらかというと男性で起こりやすいと言われています。

腰椎椎間板ヘルニアの症状(腱反射 どうなる)

腰椎椎間板ヘルニアでは、腰痛や、腰から足にかけての痺れが生じます。
急性期には、起き上がれないほどの強い痛みが出ることがあります。
その後、腰痛が治まると、臀部や足の痛みや痺れが生じます。
さらにひどい場合は、下肢の筋力低下や深部腱反射の消失が起こります。
立位や歩行によって症状が増悪し、休みながらでないと長時間の歩行ができない状態を「間欠跛行」と呼び、腰椎椎間板ヘルニアに特徴的な症状です。
下肢伸展挙上テストなどの誘発試験によって痛みが増悪することも特徴のひとつです。

腰椎椎間板ヘルニアの病態

上記のような症状は、ヘルニアによる炎症と、神経の圧迫のために起こります。
腰椎椎間板ヘルニアでは、腰椎間でクッションの役割をしている椎間板が後方に飛び出します。
椎間板脱出による炎症によって、強い腰痛が生じます。
また、脱出した椎間板が神経を圧迫することで、痛みや痺れをきたします。
この時、坐骨神経のはじまりにあたる神経根が圧迫されると、坐骨神経痛となります。

腰椎椎間板ヘルニアの治療

症状がひどい場合には、ヘルニアを摘出する手術が検討されます。
例えば、痛みや痺れが強い、下肢の筋力低下がある、下肢の深部腱反射が消失する、などといった場合が手術の適応になります。
症状が軽度であれば、対症療法や運動療法を行います。

坐骨神経痛と椎間板ヘルニアの違いは

前述の通り、坐骨神経痛とは症状の名前であり、その原因として、腰椎椎間板ヘルニアをはじめとする種々の疾患がある、ということになります。
別の言い方をすると、坐骨神経痛は、腰椎椎間板ヘルニアの症状のひとつであると言えます。
坐骨神経痛に強い腰痛や間欠跛行を伴う場合は、腰椎椎間板ヘルニアの可能性が上がるでしょう。
反対に、腰痛はほとんどない(糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛)、歩いているとむしろ症状が楽になる(梨状筋症候群)、などの特徴は、腰椎椎間板ヘルニア以外の疾患を疑います。

坐骨神経痛と間違えやすい病気は?

坐骨神経痛ではないにも関わらず、椎間板ヘルニアのように坐骨神経痛と似たような症状が出るために間違いやすい疾患があります。例として、以下のようなものがあります。

骨折や打撲

骨盤骨折や大腿骨近位部骨折で、臀部や大腿の痛みが出ます。
転倒や事故などきっかけがわかっていれば診断は容易いですが、高齢者の場合は受傷起点がはっきりせず、症状だけで受診されることもあります。
レントゲンやCTなどの検査を行い、診断します。
治療は、安静、もしくは骨折があれば手術となります。

仙腸関節痛、椎間関節痛

腰椎や仙骨の関節に由来して痛みが生じることがあります。
局所の痛みに加え、腰や下肢への放散痛が出るため、坐骨神経痛と間違いやすい疾患です。
治療として、関節を支配する神経をターゲットとした神経ブロックを行います。

血行障害性疼痛

下肢への血流が障害されることで、痛みや痺れの症状が起きます。
多くの場合動脈硬化が原因であり、糖尿病や高脂血症の合併症として発症します。また、喫煙も一因となります。
腰椎疾患の場合と同様に間欠跛行を生じますが、誘発試験は陰性となります。
診断には、血管造影検査や足関節/上肢血圧比(ABI)の測定を行います。
治療は背景疾患の治療と、血流改善を目的とした血管拡張薬の内服や血栓摘除術などです。

まとめ

坐骨神経痛について、腰椎椎間板ヘルニアとの違いや症状などについて、ご理解いただけたでしょうか。
坐骨神経痛であることがわかっても、治療をする上ではその原因がなにかをはっきりさせることが重要です。
初発の坐骨神経痛や、症状が長く続いてお困りの場合は、一度病院を受診し医師の診察や検査を受けてみてください。

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