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年齢を重ねるに従って体の不調を感じるようになった、という女性の方は、多いのではないでしょうか。40代や50代は、仕事に趣味にアクティブに邁進する世代である一方、「更年期」とも呼ばれ、様々な体の変化が出やすい時期でもあります。
腰痛や腹痛は全世代で起こりうる症状ですが、更年期になってから今までに感じたことのない痛みや、長く続く痛みが出現し、戸惑うこともあるでしょう。
この記事では、更年期に起こる腰痛・腹痛について、
• なぜ女性の更年期に腰痛や腹痛が増えるのか
• 更年期に起こる腰痛や腹痛の原因は
• 更年期の腰痛や腹痛の治療方法
についてご紹介します。
更年期に腰痛 や下 腹部 痛が増える原因
女性の更年期とは、閉経の前後10年ほどの間で、ホルモンバランスが大きく変化する期間を指します。日本人の閉経年齢の平均は約50歳ですが、個人差が大きく、更年期の時期は30代〜60代まで幅があると言えます。
更年期には、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが急激に低下し、ホルモンバランスの乱れによって様々な体の不調や情緒不安定をきたします。
それらの症状は「更年期症状」と呼び、中でも生活に支障をきたすほど程度がひどいものを「更年期障害」と呼びます。
また、この世代は昇進や定年退職、子供の自立や親の介護など、ライフイベントによって生活環境が変わることが多く、このような外部ストレスも相まって更年期の症状をよりひどくする場合があります。
更年期の症状は、火照り、冷え、めまい、耳鳴り、頭痛、焦燥感、疲労感…など多岐に渡ります。
腰痛や腹痛もまた、更年期の症状として一般的なものです。
しかし、更年期の症状だと考えているものの中には、何らかの器質的な疾患が隠れていることがあるので、注意が必要です。
以下で詳しく説明していきます。
更年期の年代では、腰椎疾患や婦人科系疾患などが増えてくるため、更年期の症状とは関係なく腰痛や腹痛をきたすことがあります。
ここからは、更年期に起こる腰痛や腹痛について、「更年期障害」と「その他の疾患」に分けて、説明していきます。
更年期障害としての腰痛
エストロゲンには関節や軟骨の潤滑性を保つ働きがあり、エストロゲンの低下に伴って腰の関節の痛みが生じます。
また、エストロゲンの低下による自律神経の乱れによって、腰回りの血流が悪くなることも腰痛の一因と考えられます。
更年期障害の治療として、エストロゲンや黄体ホルモンなどを内服するホルモン補充療法や、漢方薬などがあります。
また、対症療法として、痛み止めの内服やブロック注射を行う場合もあります。
自宅でできる対処法としては、軽い運動やストレッチなどで血流改善を図ります。場合によっては、症状ある間は安静が必要なこともあるため、医師と相談の上行ってください。
その他の腰痛をきたす疾患
腰椎椎間板ヘルニアは、壮年期の男性に多いと言われていますが、女性にも生じることがあります。
腰の痛みと共に、臀部や下肢の痺れがある場合に疑います。
痛みや痺れの症状がひどい場合、下肢の筋力低下をきたしている場合は手術になることもあります。
その他、腰の痛みをきたす疾患として、腰椎椎間関節症や仙腸関節炎などがあります。いずれも、痛み止めの内服や注射などの対症療法を行います。
更年期障害としての腹痛
ホルモンバランスの急激な変化により、自律神経の乱れによる胃腸機能の低下をきたします。
腹痛に加え、吐き気、むかつき、胃部不快感、腹部膨満感なども症状として現れます。
このような症状に対して、ホルモン補充療法や漢方薬を使用することがあります。
また、下腹部痛や排尿時痛、頻尿などがあれば、膀胱炎を疑います。
エストロゲン低下により膣粘膜が萎縮し膣常在菌が減ることで、陰部の菌が繁殖し、膀胱炎を起こしやすくなります。
治療として、水分を多く摂取し排尿を促したり、抗生剤加療を行います。
その他の腹痛をきたす疾患
更年期の年代で増えてくる婦人科疾患に、子宮筋腫や子宮腺筋症、卵巣腫瘍などがあります。
子宮腺筋症では、月経周期に合わせてひどい腹痛が生じることがあります。月経痛は年齢に伴って改善する場合が多いため、更年期の年代で新たに生じた月経痛であれば、注意が必要です。
子宮筋腫や卵巣腫瘍は、それ自体では腹痛の原因となりませんが、進行し大きくなれば腹部臓器を圧排し腹満感やむかつきを生じます。
腫瘍自体は良性の場合も多いですが、症状緩和のために手術を行うことがあります。
また、消化管に感染や炎症を起こす疾患として、憩室炎があります。
大腸の壁の脆弱になった部分が憩室となり、そこに感染を起こすことで腹痛が生じます。
40代以上に多く、繰り返す場合があります。絶食や抗生剤投与で治療を行います。
まとめ
更年期に起こる腰痛・腹痛について、原因や対処法についてご紹介しました。
更年期はホルモンバランスが大きく変化するとともに、多くの人にとってライフイベントにより生活環境が変わる時期でもあるため、症状の緩和のためには外部ストレスとうまく付き合っていくことも大切です。
また、更年期の症状と思い込んでいて、治療が必要な病気の発見が遅れる場合があるので、注意が必要です。
ホルモン補充療法や漢方薬など、更年期の症状を緩和するための治療もありますので、お困りの症状があればまずは病院を受診するようにしてください。
この記事を書いた人
名前 | TOMOKO |
職業・資格 | 麻酔・ペインクリニックを専門とする医師 |
プロフィール | 手術麻酔や術後管理に従事するかたわら、肩こりや腰痛に代表される 慢性痛の診療にも尽力しています。 ライターとして 「tomoko」のニックネームで医療系記事を中心に 執筆活動も実施。趣味はヨガ、登山、DIYなど。 |
参考文献)
厚生労働省 eヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-081.html
厚生労働省 ヘルスケアラボ
https://w-health.jp/climacterium_alarm/about_climacterium/
日本産婦人科学会 更年期障害
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14