腰痛の神経ブロック注射知識 効果や副作用リスクと費用 受診の流れも

腰痛の神経ブロック注射知識 効果や副作用リスクと費用

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急性腰痛症(ぎっくり腰)や椎間板ヘルニアによる痛みに対する治療法で、「神経ブロック」もしくは「ブロック注射」」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
急激な痛みを治療したいけど、注射と聞くとちょっと怖いな、と思われる方も多いでしょう。リスクや費用、受診の流れも気になるところです。
この記事では、

1. 腰痛で使用するブロック注射とは
2. 腰痛でブロック注射はどんな時に使用する?その効果は?
3. 腰痛ブロック注射のQ&A(リスク、費用、受診方法 etc.)

など、痛みを鎮めるブロック注射に関する知識をご紹介します。

※実際に受診される際には、専門医の指示に従ってください。

目次

神経ブロック注射とは

神経ブロック注射とは?
神経ブロック注射とは、局所麻酔薬等の薬剤を用いて感覚神経や自律神経を一時的に麻痺させるものです。
専用の針をエコーや透視装置で確認しながら神経のそばまで進め、神経周囲に薬液を注入します。
神経ブロックを行うシチュエーションとしては、痛みの治療を行う外来や、手術室や救急処置室で鎮痛が必要な場合などです。
神経ブロックは、一度の施行では薬の作用がなくなれば効果が切れてしまうので、痛みの治療が目的の場合は何度か繰り返して行います。また、アルコールや専用機器を用いた神経破壊や神経熱凝固を行なうこともあります。

神経ブロックは何科で行う?

神経ブロックは、ペインクリニックを標している麻酔科か整形外科で行われることが多いです。
整形外科では、骨や腱、筋肉を専門に扱っているため、四肢の痛みや腰痛に対して神経ブロックを行っています。
麻酔科で行う神経ブロックはさらに幅が広く、神経障害性疼痛、癌性疼痛、術後痛などに対して様々な神経ブロックを行ないます。

腰痛ではどんなとき神経ブロック注射を使う?

神経ブロックを行う場合とは?
神経ブロックは、ほとんどの腰痛において一時的な鎮痛効果を得ることができます。
さらに何度か繰り返して行うことで、長期的な効果が期待できます。
中でも、神経ブロックを積極的に検討する条件として、以下のようなものがあります。

• 内服薬が効かない
• 急性痛で動けないほど痛い
• 神経の支配領域に沿った痛みである
また、神経ブロックが有効な疾患としては、
• 急性腰痛症(ギックリ腰)
• 腰椎椎間板ヘルニア
• 腰椎椎間関節症
などがあります。

反対に、神経ブロックを行わない場合は?

以下のような場合は、神経ブロックの積極的な適応とは言えず、別の方法を検討します。

• 手術が優先される
事故や転倒で発生する椎体骨折では、重篤な場合手術になることがあり、そのような場合はまず手術が優先されます。

• 他の方法で効果が期待できる
腰痛に対してまだ何も治療が開始されていない場合は、先に内服加療や点滴が開始され、それでも痛みが改善しない場合に神経ブロックを行うことが多いです。

• すでに何度も神経ブロックを行なっている
すでに何度もブロックを行なっている場合は、その神経ブロックでは十分な効果が得られないということですので、別の種類の神経ブロックや神経ブロック以外の治療を検討する必要があります。

• 感染のリスクがある
例えば、怪我をした後の腰痛で、針を穿刺する場所の皮膚が治癒していない場合は、感染を避けるためブロック注射は行いません。

• 抗血栓薬を内服している
神経の周囲には血流が豊富であるため、血液がサラサラの状態だと穿刺によって神経周囲に血腫を作ることがあります。心臓弁膜症や不整脈で抗血栓薬を内服している方では、神経ブロックを行えない場合があります。

神経ブロック注射は腰痛以外ではどんなときに使う

腰痛以外では、どんな時に神経ブロックが行われるでしょうか。
神経ブロックは、痛みをとる目的で様々な体の部位で行われます。
ペインクリニックでは、例として、怪我や術後の後遺症に対して、腕神経叢、大腿神経、坐骨神経などをターゲットにブロックを行なっています。帯状疱疹による顔面や胸部の痛みに対して、三叉神経ブロックや肋間神経ブロックを行うこともあります。
また、骨折などの手術の際、術中・術後の痛みを軽減するために神経ブロックを行うことがあります。

神経ブロック注射どんな悩みの人におすすめ?

神経ブロック注射をおすすめする例
痛みの治療は、必ずしも痛みを0にすることだけが目標ではありません。
なんとか夜眠れる程度まで痛みを改善したい、飲み薬はなるべく減らしたい、あまり頻繁に病院に通えない等、人それぞれ治療目標や生活の状況が異なります。
神経ブロックの他にも痛みの治療法はあるため、患者さんの希望を踏まえ、よく相談した上で神経ブロックを選択することが望ましいです。
神経ブロックをおすすめするのは、たとえば以下のような場合です。

• 痛みをとにかく何とかしたい
突然生じた急激な痛みで、内服加療だけではおそらく不十分と考えられる場合は、内服加療と同時に神経ブロックを行なうことがあります。神経ブロックの禁忌事項がないかどうかは、必ずチェックする必要があります。

• 内服薬を減らしたい
基礎疾患があって薬をたくさん飲んでいる方や、高齢で薬の管理が難しい方など、なるべく新しい薬を増やさない方がいい場合があります。また、痛みに対して使う薬の中には、心不全、不整脈、ふらつき、便秘などといった副作用が生じるものがあるので、内服をなるべく避けようとすると神経ブロックはいい選択です。

• 今後、神経破壊や神経熱凝固を検討したい
痛みの治療として、神経破壊や神経熱凝固などに興味がある方もいるかもしれません。時間が経てば効果が切れる神経ブロックと違って、一度の処置で半永久的な効果が得られるため、非常に有効な方法と言えます。
神経破壊や神経熱凝固は神経を不可逆的に変化させるので、処置を行なう前にまず神経ブロックを行い、確実に効果が得られることを確認します。

腰痛ブロック注射はどんな効果や効き目

神経ブロックの効き目は?詳しい方法は?
神経ブロックは、単一の神経もしくは関節・筋膜などをターゲットに局所麻酔薬等の薬剤を注入するものです。ですので、薬剤の効果が切れれば、数時間〜数日で痛みはまた元に戻ります。(1回の神経ブロックで持続した効果を得られる場合もあります。)
神経ブロックの目標は、何度か繰り返すことで段階を踏んで痛みを改善すること、また一時的に痛み刺激を断ち切ることで、脳が痛みを記憶し慢性痛に移行するのを防ぐこと、などとなります。
ここからは、実際の神経ブロックについて、具体的に説明していきます。

腰痛の場合どこに打つ

腰痛に対して神経ブロックを行なう場合は、腰痛の原因がどこにあるか、まずは見当をつけなければなりません。
椎間板、神経根、椎間関節、仙腸関節、靭帯や筋肉など、腰痛の原因は様々です。
身体診察や画像検査からまずは腰痛の原因を絞り込み、それぞれを対象としたブロック注射を行います。

痛みってどれくらい

注射の痛みについて
神経ブロック注射の痛みについて
腰痛に対して行なう神経ブロックは主に腰から臀部にかけて行なうことが多いですが、この部分の皮膚は比較的痛みに鈍感なため、そこまで強い痛みは生じにくいと言えます。
また、激しい腰痛がある場合は、相対的に注射の痛みは感じにくい場合が多いです。
注射の痛みを軽減する工夫
ただ、それでも注射の痛みが全くないわけではありません。痛みを軽減するために、次のような工夫を行います。

• 説明しながら行なう
腰の注射は患者さんからは見えない位置で行なうため、不安な気持ちになりやすいです。不安を感じると刺激に敏感になるため、処置の状況がわかるよう、医師や看護師が説明をしながら行います。

• 細い針を使う
神経ブロックの種類によって必要な針の太さは違いますが、その中でなるべく細い針を使って実施します。

• 皮膚に局所麻酔を行う
神経ブロックに太い針が必要な場合は、まず細い針で皮膚に局所麻酔をしてから神経ブロックを行います。

安全性は?どのようなリスクがある?

神経ブロックの合併症
神経ブロックは比較的手軽な処置ですが、侵襲的な治療である以上、合併症は避けられません。
ほとんどの神経ブロックに共通する合併症としては、以下のようなものがあります。

• 局所麻酔薬中毒
局所麻酔薬は中毒を引き起こす可能性がある薬剤であり、薬剤ごとに極量が決められていますが、人によっては少量の投薬でも中毒をきたすことがあります。口唇の痺れ、手足の痺れ、嘔気などの症状から始まり、重篤になると痙攣を起こしたり心肺停止に至ったりします。薬剤を少量ずつ使うことや、処置の後は決められた時間観察を行なうことが大切です。

• 感染
皮膚を消毒してから注射を行いますが、神経ブロックに伴って局所の感染を起こすことがあります。体の深部のブロックでは、腸腰筋膿瘍や硬膜外膿瘍など、稀ですが重篤な状況になることがあります。

• 血腫
神経の近くには血管が存在しており、注射によって出血し血腫になることがあります。神経ブロックの前には、坑血栓薬の内服がないかチェックし、採血で血小板や凝固系に異常がないか確認します。

その他、神経ブロックの種類によって様々な合併症が想定されます。自分が受ける神経ブロックの合併症に関して、詳しくは主治医からよく説明を受けるようにしてください。

神経ブロック注射の費用

神経ブロックにはいくらかかる?
腰痛に対して行われる神経ブロックの診療報酬点数(※)は、神経ブロックの種類によって80〜1500点と幅があります。例えば、腰部硬膜外ブロックは800点、トリガーポイント注射は80点となります。
窓口で支払う自己負担額は、自己負担3割の場合で約300円〜5000円となります。
※診療報酬点数:医療行為やサービスを点数化して定めたもので、1点=10円で計算します。

腰痛で神経ブロック注射受診の流れ

神経ブロックを受ける場合の流れ
神経ブロックは、ペインクリニックを標榜する麻酔科か整形外科で受けることになります。
ただし、麻酔科、整形外科の外来全てで神経ブロックを行なっているわけではないため、注意が必要です。
以上を踏まえ、初めて神経ブロックを受けるまでの流れは、次のようになります。

1. 受診する病院を決める(直接予約を取るorかかりつけ医からの紹介)
病院によっては、ホームページに自施設で行なっている治療を掲載している場合があるので、参考にできます。
お住まいの地域でどこに受診したらいいかわからない場合は、かかりつけのクリニックで相談し、紹介状を書いてもらうと受診がスムーズです。

2. 外来を受診する
予約の時間に病院を受診します。注意することとして、ご自身で車を運転していくと、当日は注射ができない場合がありますので、可能であれば送迎してもらうか公共交通機関で向かうといいでしょう。

3. 腰痛の原因を調べる
医師の診察を受け、必要があれば画像検査など各種検査を行います。

4. 神経ブロックの禁忌事項がないか調べる
内服薬のチェックや採血を行い、神経ブロックを行なっても良いか、禁忌事項がないかを確認します。

(場合によっては、初診時には3と4までを行い、神経ブロックを行なうのは後日となることがあります。神経ブロックの種類によっては入院が必要な場合もあるため、ここで入院の手続きを行なうこともあります。)

5. 神経ブロック注射
神経ブロックの禁忌事項がなく、適応であると判断された場合は、神経ブロックを行います。
まずは医師からこれから受ける神経ブロックについて説明があります。合併症など、気になることはなんでも質問しましょう。帰宅してから注意することや、何か困ったことがあった場合の緊急連絡先を聞いておくことも重要です。
神経ブロック注射はおおよそ数分〜15分ほどで終わるものが多いです。処置中に何か変わったことがあれば、すぐに医師に伝えるようにしてください。

6. 安静、帰宅
合併症がないか確認するため、30分〜1時間程度の安静時間を取ったのち帰宅となります。
頭痛やふらつきなど、気になる症状があった場合は、無理せず安静を延長し、症状がなくなったことを確認してから帰宅するようにしましょう。

以上が、神経ブロックを受けるまでの流れになります。診察、検査から安静時間まで含めるとかなり時間がかかることがあるため、初めての受診の際にはその後の予定に余裕を持たせておいた方がいいでしょう。

神経ブロック注射にはどんな種類がある

腰痛に対して行なう神経ブロック
神経ブロックには様々なものがありますが、大まかには深い神経ブロックと浅い神経ブロックに分けられます。
深い神経ブロックは、脊髄神経や神経根をターゲットにしており、出血や臓器損傷などの合併症に気を遣う必要があります。
浅い神経ブロックは、末梢神経の付近や筋膜周囲などに薬液を投与するもので、より手軽に行えます。

<深い神経ブロックの例>
• 硬膜外ブロック
脊髄神経および神経根がターゲットの神経ブロックです。
腰の正中もしくはやや外側より穿刺し、硬膜外腔と呼ばれる場所に薬液を注入します。
痛みの範囲がある程度限局している場合に有効です。一度の注射で、両側に効かせることができます。

• 後枝内側枝ブロック
上下の椎骨を繋いでいる椎間関節に由来する痛みがある場合に行います。
透視装置を用いて針の位置を確認するため、場合によっては手術室で行います。

• 仙腸関節ブロック
骨盤と仙骨を繋ぐ仙腸関節に由来する痛みの場合に行います。仙腸関節をエコーで確認しつつ行います。

<浅いブロックの例>
• トリガーポイント注射
トリガーポイント注射はひとつの神経をターゲットにしておらず、押して痛みがある場所の表層に薬剤を注入します。急性腰痛症(ぎっくり腰)で激痛がある場合に、著効するケースがあります。

まとめ

腰痛に対して行なう神経ブロックについて、ブロックの方法や種類、合併症、受診の方法・費用などをご紹介しました。
初めて腰痛を発症した方にとっては、神経ブロックはなじみのない治療法で不安も多いと思います。
しかし、痛みに対して有効な治療のひとつであることは間違いありません。
専門医から話を聞き、納得できるようであれば、ぜひ神経ブロックを治療の選択肢に加えてみてください。

参考
しろぼんねっと 令和4年診療報酬点数表 第2節神経ブロック料
https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r04_ika/r04i_ch2/r04i2_pa11/r04i2b_sec2/r04i2b2_L100.html

この記事を書いた人

名前 TOMOKO
職業・資格 麻酔・ペインクリニックを専門とする医師
プロフィール 手術麻酔や術後管理に従事するかたわら、肩こりや腰痛に代表される
慢性痛の診療にも尽力しています。
ライターとして 「tomoko」のニックネームで医療系記事を中心に
執筆活動も実施。趣味はヨガ、登山、DIYなど。
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